菅野 健のいま、なにつくってるの?

- アーティストだからこそ生み出せるもの

『アマレット』や『アタシちゃん』は、“アーティスト”としての根本さんの内面から湧き出た作品だと思います。逆に、クライアントから与えられたテーマで描く“イラストレーター”としての仕事についてお聞かせください。

書籍装丁画や広告など、受ける仕事は先方の依頼内容を第一に、常に“職人型”の気持ちで取り組んでいます。

指定された期間で何点もバリエーションを描くのですが、最終的に先方から気に入っていただけるものは、お仕事の内容を無理なく汲み取れた、自然に描いた作品のほうが多かったです。

クライアントの要望に対して、どのようなことを心がけて描かれているのですか?

イラストレーションにも色々な流行があるけれど、私自身は飽きられることのない“普遍的な価値”のあるものを提案したい。

絵画としても力不足のないイラストを提供することが、お仕事で一番気をつけていることです。

 

根本さんが装画を手がけた数多くの書籍の中でも、角田光代『対岸の彼女』と井上荒野『切羽へ』の2作品が直木賞を受賞されていますね。

両作品とも、自分の感性に忠実に描いた方が最終的に選ばれたので嬉しかったです。数カ月後に受賞のニュースを聞いて驚きました。とても光栄なことでした。

- 絵を描くことで、人の心に寄り添いたい

さまざまな経験を糧にキャリアを積んでこられた根本さんですが、今後のクリエイティブ活動の構想はどのようにお考えですか?

お花や植物がもたらしてくれるようなパワーは、絵にもあるのではないかと思っています。見る人の心に寄り添い、包み込んであげられるような絵を描いていきたいです。

「心に寄り添う絵」とは、どんなイメージですか?

描いた絵は自分の子どものように感じるし、“命あるもの”だと思っています。家族のように、ペットのように、いつも持ち主のそばにいて声をかけてくれるような存在。見る人をやすらぎや安心感で包み込んでくれるものであってほしいです。

世の中には創作活動を通じて自分自身の心を解放する“アートセラピー”という考え方があるけれど、絵を見ることで得られる効果もきっと大きいでしょうね。

絵が“花束”のような役割を果たしてくれたらいいなと思っています。感染予防でお花を禁止している病院もありますし、お見舞いの時、花束の代わりに画集をプレゼントしてもらえるような選択肢が生まれたら嬉しいですね。医療や看護にも興味があります。

根本さんご自身は中学3年生の時に、大きな入院手術の経験があるそうですね。

その闘病経験もあって、病院は私にとって身近な存在なんです。いつか病院の壁画など、ホスピタリティ・アートを手がけ、患者さんの支えになりたいと願っています。そしてもちろん、ありふれた日常の中でも人の心に寄り添い、肩を抱いてあげたい、そんな母親のような気持ちで、母なる海や自然に触れたときの気持ちを絵に込めていきたい。

自分の中から素直に湧き出てくる想いに乗せて

今回アカデミックライフに登場する作品は?

「この絵がおうちにあったらいいな」と思ってもらえる絵を描きたいです。そして、購入してくださる方にとって、作品が“寄り添う”ものであってほしい。

幼少期から「人のために頑張りすぎていた」と分析していた根本さんが、自分自身を大切にするようになって、そしてまた改めて「人の役に立ちたい」と思っている。

無理していたあの頃と違って、自然と、素直にそう思える自分になりました。やっと少し大人になれたのかな(笑)自分のためにやったことが、人のためにもなる。それがとても大切なことです。

根本さんの描く故郷への想い、せつなさ、そして安心感。きっとその絵は、家族の一員として生き続けることでしょう。

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根本有華のプロフィール

根本 有華(ねもと ゆか)

  • イラストレーター

日本大学芸術学部美術学科卒。

靴企画販売を経て、第13回HBファイルコンペ日下潤一賞を受賞し、主に装丁画家として活動を始める。

 

装画代表作に、角田光代著「対岸の彼女」、井上荒野著「切羽へ」の直木賞作品2作がある。その他、柴門ふみ著「同・級・生」「東京ラブストーリー」「あすなろ白書」の文春文庫6部作、平野国美著「看取りの医者」など。

著書、風景画集「アマレット」(リトルモア)、コミックノベル「アタシちゃん」(小学館文庫)は、人に寄り添う表現をコンセプトに制作。

現在は加えて「家族」「こころ」をテーマに、絵画、漫画を制作発表している。

美術教育にも携わっている。

展示会情報

■テーマ
コノハナ 月
■開催日程
2011年3月3日(木)~ 3月15日(火)
11:00 ~ 19:30
■ライブペイント開催日程
2011年3月5日(土) 12:00~

■開催場所
アカデミックライフ代官山本店

アカデミックライフ代官山本店

  • ■定休日:水曜日
  • ■入場無料