菅野 健のいま、なにつくってるの?

菅野健の“いま、なにつくってるの?”第6回の登場は、ササオカヨウスケさん。

キャンバスにアクリル絵具で描かれる、人や動物・自然をモチーフにした鮮やかな色彩の世界。その幻想的な温かさと、強いエネルギーとが相まった作品の背景にあるものとは?

ササオカさんの創作活動の拠点となっている横浜の街を散策しながらのインタビューです。

菅野:幕末、神奈川条約ともいわれる日米和親条約を締結。開国・開港以来、日本の玄関として発展してきた貿易都市 横浜は、今もなお異国情緒が薫ります。ササオカさんは大学への進学をきっかけに、この街を訪れたそうですね。

ササオカ:出身は新潟県ですが、全国的な名所である横浜は、昔からあこがれの地でした。

大学で油絵を専攻していた頃や、大学卒業後に水彩画を描いていた3~4年の間も、風景を求めてこの辺りによく通っていましたね。

卒業後しばらくは、画廊に勤める傍らで作品制作や個展を続けていたそうですが、その頃は横浜の景色が絵の題材になっていたのですね。

よく知られている風景が多いので、個展を見に来てくださった方が「この場所が好き!」と喜んでくれるのが嬉しかった。横浜には、どこを取っても絵になる魅力があります。

港の風を感じながらリラックスできるし、いつも新しいインスピレーションをもらえる気がします。

 

- 褒められることで、絵がもっと好きになった

ササオカさんが絵を描くことに興味を持ち始めたのは、いつ頃でしたか?

物心ついた頃から大好きでした。
幼稚園の時から色々な所に出展しては賞をもらっていて、周りから評価を受ける機会が多かったです。父親となった今、教育的な観点においても、そういった幼少期の経験は大きなものだったと認識しています。絵に夢中になるきっかけをくれた周囲の環境に、とても感謝しています。

子どもの成長にとって、“褒められる”経験というのは重要ですね。賞状のように、その評価が“形”になって表わされるのも大きい。

大学では「絵を描くことに限定せず、もっと広くさまざまなことを勉強したい」と思い、中学・高校の教員免許(美術)を取得したり、学芸員の資格取得を目指す中で美術展企画のノウハウを学びました。横浜美術館での実習も懐かしいです。

しかし進路を考える上では、やはり一人の“クリエイター”として生きたいという葛藤があった。自らの手で、絵具を使って、“描きたい”という欲求をいつも抱えていたんです。

- 自分自身を“イラストレーター”と名乗る理由

人気ロックバンド『ASIAN KUNG-FU GENERATION』のツアーグッズを始め、さまざまな媒体で作品を手掛けていらっしゃいますが、ホームページやポートフォリオを拝見する限りでは、“ササオカヨウスケのイラストだ”と一目でわかるような個性が確立されていると感じます。

イラストレーターとしての名刺を持つようになってから、クライアントワークにおいては、“社会に落とし込んだ時に活きるイラストレーション”を常に意識しています。
子どもにも一瞬で視認できるようなキャッチーな色と、境界を明確にした配色。モチーフもシンボリックに、できる限りシンプルなものを。

そんな“イラストレーター”としての姿勢は、どのように確立されていったのですか?

学生時代は「描きたいものを描くのがアートだ!」と言わんばかりに、人間としても利己的な部分がとても強かったように感じます。でも卒業後、社会との関わりの中に身を置くうちに、「そういう気持ちを無くしたほうが、周囲の人に対しても、自分に対してもプラスになる」と考えるようになった。
現在は自分の中で「タブロー(独立した完成作品として制作されるもの)」と「イラスト」を区別した上で、制作に臨んでいます。

活躍中のクリエイターには、さまざまなスタンスの違いが存在すると思います。
ササオカさんにとって“イラストレーター”の定義とは?

イラストはみんなが共同で作り上げる商品の“一部”であり、イラストレーターはその商品作りの“一員”である。イラストは何かしらの媒体に乗って、社会に落とし込んだ時に初めて成立するものだと考えています。

クライアントの依頼に対し、商業的にいかに良い働きをする“素材”を提供できるか。色々な考え方のイラストレーターがいますが、僕自身は、拡大・縮小・色調整・トリミングなど、自分のイラスト作品の加工使用を理解しているんです。

 
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ササオカヨウスケのプロフィール

ササオカヨウスケ

  • イラストレーター

1976年 新潟県生まれ

1999年 横浜国立大学教育学部美術学科 卒業

2006年 みづゑ賞セキユリヲ賞 受賞

2007年 ザ・チョイス入選(リリー・フランキー選)

 

ASR(Artistic Social Responsibility:アーティストの社会的責任)の概念を基盤とした活動(ASR活動)を行う非営利ユニット「WALK」主宰。groupRough所属。