菅野健の“いま、なにつくってるの?”第3回の登場は、橋本孝久(はしもとたかひさ)さん。
2011年2月17日より2週間、アカデミックライフのギャラリースペースで個展を開催します。
イラストレーターであり、外資系広告会社のアートディレクターとして活躍中の橋本さん。彼がイラストを描き始めた背景には、一体どのような想いがあるのでしょうか?
自宅から自転車でよく訪れるという代々木公園を散歩しながら、お話を聞いてみましょう。

菅野:代々木公園は橋本さんにとって、どんな場所ですか?
橋本:休日、自宅から自転車で20分くらいかけて来るのですが、この公園の“抜け感”が好きなんです。張りつめた気持ちが楽になる感じ。ビルが建ち並ぶ東京とはかけ離れた、地元の風景を思い出させてくれます。
ご出身は福井でしたね。小さい頃から、クリエイティブな分野に興味をお持ちだったのでしょうか?
「将来、何か自分でやりたい」という漠然とした気持ちはありましたが、クリエイティブな分野には全く興味はなかったです。とにかくスポーツに夢中な子どもで、野球を中心に、スキー、空手、バドミントンなどをしていました。今のような職業に就いている自分の姿は想像できませんでしたね。現在も、グレイシー柔術、野球、スノーボードなど定期的に運動をしています。

関係ないと思っていても、実はそのスポーツが、何かしら創作意欲に結びつくということは?
運動の習慣は、自分のアイデア開発のプロセスに不可欠です。頭の中が“空白”になれる時間。運動している時には何も考えないし、考える余裕もない。クリエイティブのスイッチみたいなものは全然入っていないんです。でも人間って、考えるだけ考えても、結局は寝て起きた瞬間にひらめくようなことも多いと聞きます。

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わざと考えないようにする。それが橋本さんにとって、クリエイティブの一つの方法になっているんだね。
アイデアを考えたり、描くことは、生涯ずっと続いていくもの。だからこそ、自分の方法論をつくることが大切だと思っています。僕にとって、何も考えず公園を歩いたり、運動したりすることがその一つで、エネルギーのチャージやストレス発散にもなっています。
仕事自体はいくつか並行して存在するものだけれど、考える時間は、“これについて考えよう”と自分の中で集中させるんですか?
並行して考えずに、時間を区切って一つのことに集中します。それを小刻みに繰り返すか、まとまった時間を取るかは、その時によります。
そんな割り切りというか、橋本さんの姿勢が、会社でのアートディレクターとしての仕事と、イラストを描くことを上手く両立させているんでしょうね。
- まずは、自分で作ってみるところから始めた
現在の経歴から考えると、美大でなく経営学部のご出身という点が興味深いですね。
大学は、「自分で何かビジネスを作ってみたい」という想いから、経営学部に進みました。
自分で何かやりたいと思って経営関係の大学に進んだのは僕も一緒でした。橋本さんの場合、最初に作ったのは洋服だったそうですね。
卒業論文のテーマが「アパレル業界の国際経営論」でしたが、大学卒業の頃にレディースのワンピースを作り始めたんです。
まず自分で“形”を作るところから始めたのが面白い。今は柄(イラスト)を描いているけれど、当時、テキスタイルは既存のものを使っていたんでしょう? 専門学校に通うでもなく、テキストやミシンを買って試行錯誤しながら、自分の手で作っていったんですね。
一点もののワンピースをショップに卸していました。量産できないし、ビジネスとしては成り立っていなかったけど、自分の手で形にしたのはそれが最初です。買ってくれたお客さんから御礼の手紙が届いたことは、今でも忘れられない嬉しい思い出ですね。




