菅野健の“いま、なにつくってるの?”第2回目の登場は、佐瀬麻友子(させまゆこ)さん。
2011年1月27日より3週間、アカデミックライフのギャラリースペースで個展を開催するクリエイターです。
大人っぽく魅力的な、人の心の奥深くにアプローチする佐瀬さんの作品ですが、それが生まれ描かれる背景にはいったいどのような過程があるのでしょうか?
大の映画好きである彼女が、大学時代に足繁く通ったという思い出の場所「飯田橋ギンレイホール」をはじめ、風情ただよう神楽坂界隈をお散歩しながらのインタビューです。

菅野:佐瀬さんは映画が大好きだそうですね。この名画座にはいつ頃から通っていたの?
佐瀬:大学3年生頃からでしょうか。上映される作品を年間1万円で見放題の「シネパスポート」を買って、毎日のように通っていました。ここまで実家から自転車で15分くらいだったので。本当にこれまで、ものすごい数の作品を観てきましたね。古い作品でも、リリースされていて興味のあるものはほとんど見尽くしてしまった感じで…20代の時に「もう観るのがない!」という状況になったんです。
それってすごい財産だね。映画から何かを自分の中に取り込もうという意識で?
そうですね、あの頃は勉強感覚も大きかったと思います。名作と評されるものから、眠くなってしまうような学術的な作品まで、さまざまなジャンルのものを観ていました。新しい作品より古い時代の作品に感銘を受けることが多いですし、邦画よりも洋画のほうが好きです。

邦画にはあまり興味がないということ?
母国のものでないからこその感覚かもしれません。言葉や歌詞でも、海外のもののほうが詩的に感じてしまうんです。読む本も翻訳小説ばかり。日本にはない単語を、翻訳者の方がいろんな語彙を使って訳されるので、表現に“ふくらみ”を感じます。
- 佐瀬さんの作品が生まれる背景

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佐瀬さんの作品を初めて拝見したとき、人物の“生々しさ”が独特の魅力だなぁ~と僕は思ったんだけど、テーマや構図はやっぱり映画から影響を受けてきた?
直接的な影響を映画から受けることはないです。ただ、映画を観ることで自分の中にいろいろな“世界観”が蓄積されて、それが絵を描く時のモチーフや雰囲気作りにつながることはあります。
映画以上に、自分に影響を与えてくれるのが小説ですね。気になるセンテンスが頭の中にずっと残っていて、物語のある瞬間を切り取るようにしてイメージが浮かんだり、自分の中でストーリーが派生していきます。
フィクション、架空のシーンなのに、妙に生々しく感じてしまうのが不思議なんだよね。いったい何がそう感じさせるんだろう。実体験の豊富さも関係していますか?
いえ、私は完全な妄想型です。想像力で人生経験を積もうとするタイプなので(笑)ほとんど外部からの情報で組み立てていく感じです。
実体験よりも、想像力からクリエイティブするほうがリアルになるって…クリエイターの特権だね。経験は無限にできないもんね。広重も東海道五十三次で行ったことのない場所を描いているし、実際に忠実かどうかより、見る人が何かを感じるかどうかが重要なのかもしれない。
クリエイターは妄想型・経験型があるのかもしれません。例えば、ヘミングウェイなんかは“超・経験型”だと思うんです。昔、自らが戦争に行った経験が作品に色濃く活きている。
でも私自身は、本当にものすごく普通の私生活を送っているので、それを絵に反映させても貧相になってしまう気がするんです(笑)すでに作品として成り立っているもの、映画や本からインスピレーションを受けるほうが、私らしく描けます。
絵を描く世界と、自分の日常の世界がはっきり分かれている感じなんだね。お互いが侵食し合わない?
気持ちに左右されるのがあまり好きではないので。
モチーフとしては、どこか内省的な“青春”っぽい雰囲気が好きです。私自身はあまり悩まないけれど、物語の中の女の子が可愛く悩んでいたりすると、すごくいいなぁ…って。でもそれが、実際に渋谷にいるような女の子たちではダメなんです。すでに文学的に表現されているもののほうが心に深く留まります。




