菅野 健のいま、なにつくってるの?

菅野健の“いま、なにつくってるの?”第9回の登場は、北村人(きたむらじん)さん。

クレヨンや木炭、マーカーなどを用いた、対象を細かく描ききらないシンプルな表現は、気負わずリラックスした素朴な温かさが魅力。書籍の装丁や雑誌の挿絵、広告、アニメーションなど、幅広いフィールドで活躍する北村さんの創作背景にあるものとは?自宅から自転車でよく訪れるという、生田緑地をお散歩しながらのインタビューです。

菅野:豊かな自然林に囲まれた川崎市内最大の公園、生田緑地。
枡形山展望台や噴水広場、プラネタリウムのある青少年科学館、全国の古民家を集めた日本民家園、藍染め体験のできる伝統工芸館、春・秋の「ばら苑」…見どころがたくさんある憩いの場所ですね。

北村:仕事が忙しい時は家に閉じこもりがちなので、この公園で過ごすひとときが良い気晴らしになっています。敷地内にある岡本太郎美術館は必ずのぞいていますが、企画展に圧倒されますね。毎回何かを感じて帰ってきます。

北村さんはお母様がイラストレーターでいらっしゃるそうですが、ご自身がイラストレーターを志したのも、やはりその影響が大きいのでしょうか?

実のところ、母が仕事に向かう姿はそれほど直接的な印象はなかったんです。イラストレーターという職業名に聞きなじみはありましたが、自分自身がその方向に進むとは全く予想していませんでした。子どもの頃から“いたずらがきが人より少し上手いかな…”という程度の感覚だけで。

 

それが高校2年生の終わり頃、進路を考える時に初めて美術の方向を意識し始め、予備校の美大受験講座に通い始めたんです。そこでは全てデッサンの良し悪しで順位がつけられるので、得意でなかった僕はあまり友達もできませんでしたね(笑)。

- 同じ志を持った友人との出会い

北村さんにとっては好きな教科を一つ選ぶような感覚で、さりげなく美術の方向へと舵を取ったのですね。そこから東海大学の教養学部 美術学科に進まれてからは?

大学に入って満足したというより、“ここからが勝負だ!”という切迫感のようなものを抱いていました。僕の大学生活では、やる気に満ちあふれた友人たちと出会えたことが何よりかけがえのないものです。大学には学外でおこなう活動に対して援助金が支給される制度があったので、6人の仲間で「T.A.F」というグループを結成し、大学2年生頃から大きな芸術祭やデザインフェスタに積極的に出展するようになりました。

イラストレーターの世界に興味を持ったのも、その取り組みを通じてのこと。“絵を介して生活できるようになりたい”という想いが膨らむうち、具体的な目標になっていきました。

2004年に大学を卒業されてからも制作と展示活動を続けていたそうですね。そこからイラストレーターの仕事に結びつくまでの転機とは?

大学在学中から自分のスタイルを模索しながら試行錯誤を続けていたのですが、2005年にカフェ・ギャラリーの展示に向けて準備していた頃、絵の具を用いた作風に行き詰まりを感じ始めたんです。

そんな時、たまたま家に遊びに来ていた友人の金澤信君が、A4のコピー用紙に木炭で下書きしていた僕の制作過程を見て、“そのラフ画のままが面白いんじゃないの?”と。
最初は正直ピンとこなかったのですが、試しに展示作品に加えてみたら、思いのほかお客様からの反応が良かったんです(笑)。そこでイラストレーション誌が主催するコンペ『ザ・チョイス』にも応募してみたところ、入選することができました。

ドラッカーの考えにも“意外な評価を重視すべき”というものがありました。ご友人のアドバイスを素直に受け入れ、実験してみたことで、新しい道が拓けたのですね。

自分が意固地になっていた部分と、実際に人に伝わる部分とは違うものなんだな…と、しみじみ実感しました。自分らしい作風を発見するきっかけをくれた金澤君には、今でも足を向けて寝られないというか、頭が上がりません(笑)。

現在、美術作家として活動している金澤君と、絵本作家の米津祐介君とは大学時代からの同志で、毎年の恒例行事として『3人展』を続けています。

お二人の作品はサイトで拝見しましたが、三者三様ですね。

一般的には組みにくいタッチの絵柄ですが、タイトルの通り、“せっかく同級生なんだから3人で…”という想いから、同窓会のような雰囲気で開催しています。基本的にテーマは設けず、それぞれが個展を近い場所でおこなうような感覚。

どのような作品かはお互い搬入日までわかりませんが、二人は毎回予想以上のものを出してくるので、それが楽しみでもあり、良いプレッシャーでもありますね。この3人だから挑戦できるという意識も大きいですし、3人展は一生やり続けたいと思っています。

 

 
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北村人のプロフィール

北村 人(きたむら じん)

  • イラストレーター

1981年東京生まれ。

東海大学教養学部卒業。

神戸芸術工科大学 非常勤講師。

 

「ザ・チョイス」「ひとつぼ展」入選。

「TOKYO illustration 2007公募」 銅賞。

ギャラリーハウスMAYA 装画を描くコンペティションvol.6審査員賞。

2010年個展「朝から晩まで」+「しごと展」- ギャラリーハウスMAYA+maya2

書籍、雑誌、WEB等を中心に活動中。

雑誌「クロワッサン」(マガジンハウス)で連載中の室井滋さんのエッセイの挿画を担当中。